東京流れ者 鈴木清順監督

1966

鈴木清順監督東京流れ者を拝見しました。鈴木清順監督は非常にスタイリッシュで前衛的な作風が魅力的な監督で、日活時代ではその過剰な美学を攻め立てられ、「もっと普通の映画を撮れ」と経営陣から怒られていたそうです。ついに同社で映画が撮れなくなる清順監督ですが、そうした社会からの風当たりもバネにして、のちに独立して、監督の奔放な美的感覚の美しい結晶のような、『ツィゴイネルワイゼン』という、日本映画の長い歴史のなかでも比類のない傑作を撮っています。
本作『東京流れ者』はその『ツィゴイネルワイゼン』の14年前となる1966年の作品ですが、すでに「普通の映画を撮らせる」ことを目的に大幅に予算を減らされていたそうです。それでも美術の木村 威夫さんとの共同作業により素晴らしい前衛的なショットが多く観られる名作となっています。真っ白な部屋にピアノだけが置いてあり、ありえない角度で妙に間延びした浮遊感のなかで撃ち合うショット。謳っている女性がとつぜん階段の上で倒れるショット。扉を開くと落とし穴があり、落ちてゆく男を制止した俯瞰カメラで捉えるショット。壁一面の壁画の奇妙な色彩感覚のなかで撃ち合うショット。雪の中で赤提灯だけが不気味に揺れているショットなど・・・日活が、これらの美しいショットの価値を理解せず、そんなんじゃ売れないからという理由で、辞めさせようとしたのは理解に苦しみますが、経営陣にとっては映画は芸術ではなく、ビジネスなのですから仕方がないのかもしれません。
主演は渡哲也さんです。デビューから二年目の出演で、ヴィヴィットな色のスーツ(こちらも木村美術監督の絵のイメージに基づいて決められたそうです)で辺りを排する按配で、孤高に振舞うゆったりとした様を、風格たっぷりに演じられていました。
美しくも悲しみを湛えたブルージーな蔭のある歌手を演じられたのは松原 智恵子さんです。歌声は吹替(鹿乃侑子さん)ですが、「ブルーナイト・イン・アカサカ」という歌で、この曲がなかなか素晴らしかったです。まったりとしたメローでジャジーな響きに耳を傾けながら小生は、「ブルーナイト・イン」という英語の歌詞に繋げて似合う地名は、日本中どこ探しても赤坂くらいかもしれないなと思っていました。
清順ファンの方は勿論、そうでない方も機会があれば是非ご覧になってみてください。

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