殺し屋イチ 三池崇史監督

2001

今回、鑑賞した作品はTakashi Miike監督の最高に吹っ切れた趣味の悪い演出と、北村道子さんの衣装の素晴らしい色彩と存在感、Tadanobu Asanoさんの味わい深い怪演が堪能できる珠玉の一本でした。ヴィジュアルがひどく鮮烈な本作は、近年、ニューヨークのファッション・ブランドSupremeでコラボ企画が組まれるほど、若者の間の人気も高い作品で、小生としては、今日まで見逃していたことが悔やまれる作品です。
死にゆく人の表情を、妙にトップダウンのクローズショットで撮るシーンのいやらしさと、絶望的な気持ちの悪さには、Brian De Palmaの若い頃を彷彿とさせるような、底意地の悪さと性格の暗さが滲み出ていて、生まれてから今日までずっと友達が一人もいなくて、生涯でだれか一人くらい、友達が出来たらいいなと、いつも思っている私ですが、この監督とだけは友達になりたくないと本気で思いました。
入り組んだアパート(雑居ビル)の蜘蛛の巣のような閉塞感は、フルーツ・チャン監督の傑作Made in Hong Kongや、ジョニー・トー監督の快作Breaking Newsを彷彿とさせる空気感で、アジアの小国の人々の終わりのない絶望と閉塞感、世紀末感・・・そうした心情が画面の隅々に溢れていて、そうした隘路を走り回る人々の無力感と徒労感に、共感しないわけにはゆきませんでした。
テカテカした内臓や、顔が半分潰れた死体、ミンチになったヤクザたちよりもずっと元気そうに泳ぎ回る金魚、真っ二つに割れたときの人間の独特の質感など、この映画でしか観られない特殊効果も見ものです。誰が作ったのか知らないけど、ギャグなのか本気なのかわからないが、たくさん人が死んでいる絵なのに、ちょっと笑ってしまう紙一重の軽妙さが、とてもシュールでした。冷たい熱帯魚など、本作と同じくらい悪趣味の作品と比較しても、本作のキワモノ感と意味の分からなさは、ちょっと別格という感じで、全体的に何がしたいのかわからない感じが、青春っぽくていいなと思いました。(自分でも書いていて何が云いたいのかわかりません。すみません。)
そうして、本作は、なによりも北村道子さんの衣装がすばらしいのひとことです。浅野忠信さんが着ているような、自由で寂しい服。たったひとりの服。世界の何処にも辿り着かない服。それでいてひどく成熟した、すべてを背負ったような、凄みのある服。
人生で、一度でいいから、着てみたいです。

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