“The Breakfast Club” John Hughes

1985

今日はJohn Hughes監督の1985年の”The Breakfast Club”という作品を拝見しました。”The Breakfast Club”というのは一緒に朝ごはんを食べるクラブという意味ではなくて、悪いことをして、罰を受けて課外授業を充てがわれた不幸な若者たちを、皮肉を籠めて称した言葉みたいです。そんな語を題した本作は、土曜日にお仕置きのため学校に集められた若者たちが、ちょっとお互いに反目しあったり、ちょっと権威に反抗してみたり、心のうちを多かれ少なかれ曝け出してみたりする、そんな何でもないような日常を描いた作品だけど、本当はそうした何でもない日常の中に、すべての大切なことが含まれていることを、監督は誰よりも熟知していて、そうした忘れられがちな日常の凄みに光を当てるべく、考え込まれたとても繊細な演出が、しっかりと筋が通っていて、それでいて妙に大人っぽいケレン味のない悠々としたタッチで、斜に構えない監督の堂々とした語り口がほんとうにクールでした。慾を云えばもっと若い頃に、本作に出会えていれば、小生にとっては本作は、あの頃、暗い人生をどうにかして手探りで進むための、ちょっとした武器になっていたと思います。何もないような一秒、一秒のドラマを捉える繊細な演出が、全編を見事に成立させていて、ある種の毀れやすい、喪われやすい時期の心象風景を、見事に描き切った稀有な作品だと思います。自分が若い頃の鬱屈や不安や、そうした自己の投影を思い出すと、5人の若者たちが見せる青春の表情を、誰もが何処かしら抱えて生きていたように思えます。Simple Mindsの”Don’t you (forget about me)”などの挿入歌の数々も素晴らしかったです。ベースやドラムスの無機質な響きと、少し過剰に装飾的なシンセサイザーが、いかにも80年代っぽい少し浮ついたような、座りの悪いような印象で、いま37年の時を経て改めて聴いてみても、大変に面白い音楽です。映画の冒頭では、David Bowieの言葉が引用されていて、劇中で女の子がPrinceの写真を持っている場面が一瞬、映っていて、印象に残りました。2016年に1980年代アメリカへのオマージュを多数絡めて発表された、超人気ドラマ・シリーズ”Stranger Things“でも、ジョナサン・バイヤーズの部屋にR.E.M.のMurmurのポスターが貼られていたが、時代の空気を圧倒的に表出するツールは、やはりいつの時代も、その時代の若者たちに熱狂的に愛された音楽に限るということなのでしょうか。

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