David Cronenberg “Crash”

1996

今回はDavid Cronenberg監督の1996年の作品”Crash“を鑑賞しました。車の衝突事故に興奮するという方々を描いた、J. G. Ballardが原作のダーク・ファンタジーです。異常な人々の異常な行動や言動を淡々と映しているが、クローネンバーグ監督は、彼らの異常さを少しもおおげさに描くことはなく、妙に淡々と、当たり前の日常風景でも描くように撮っていて、じっと観ていると、我々の世界における日常も、そう大差ないのではないかと思わされ、現代社会の異常さを鏡の中に見せつけられているような作品です。
感覚とか喜びとか感情といったものが存外、それほど絶対的な土台の上には立っていなくて、すこし異相を変えれば、私たちはこれほどに奇妙で不可解な存在に他ならないのだと思います。
David Cronenberg監督の暗さとか底意地の怖さというものは、同じように変わった、怖い映画を撮るDavid Lynch監督や、John Carpenter監督などと較べると、論理では説明ができないというところが際立っていて、どうしてこういう映画になっているのか言葉でぜんぜん説明できない分、余計に怖いという気がしています。
David Lynch監督の映画も、理屈では説明できないとしても、監督がどうしてそういう映像を撮り、繋いだのか、監督の気分とかニュアンスが、なんとなく納得できる気がするのだが、David Cronenberg監督は、納得できないという怖さがあります。
青を基調にした、モノトーン・ベースの独特の街の色合いを担当したカメラマンはPeter Suschitzky撮影監督。David Cronenberg監督とは相性がよいようで、何作も撮っているそうです。
なんと、彼は、あの私の青春のカルト映画”The Rocky Horror Picture Show “の撮影監督でもあり、若い頃、私はあの映画の大ファンで、とおして20回くらい、部分、部分では100回以上、観ていましたので、じつは私はPeter Suschitzky撮影監督の映像ばかり見て育っていたようであります。
若い頃の友達に、思わぬ形で再開したような気分であります。


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