ウィリアム・ワイラー監督『コレクター』

1965

皆さんこんにちは。小生は、今日はコレクターという映画を拝見しました。監督はWilliam Wylerで、主演はTerence StampでヒロインはSamantha Eggarです。John Fowlesによる原作も「映画化不可能」と云われるほど、評判が良いので、小生の拙い英語力で読めるか自信がないけれど、いずれ読んでみたいと思っています。
本作は(普段はアメリカで撮っていた)ウィリアム・ワイラーがイギリスで撮った映画ということで、(普段はイタリアで撮っていた)ミケランジェロ・アントニオーニ監督の”Blowup“を彷彿とさせるような、何処か異国情緒というか、風物や街並みに対して、少し距離のあるような感覚、旅行者=移動者の視点が魅力的な作品になっています。メトロが通っているロンドンの雑踏の感じや、自然溢れる郊外の街を描くカメラの感じがとても好ましかったです。全編とおしてほとんど二人の場面で成り立っている映画だけど、そういう単調さを全く感じさせない素晴らしい演技と演出の作品でした。
犯罪モノの映画を、ひどく大雑把に分類すると、レザボア・ドッグス現金に体を張れロック・ストック・アンド・テゥー・スモーキング・バレルズ地下室のメロディーなど、わりと普通の人たち(?)が集まってドタバタやっているうちにだんだんと困ったことになってくるような系譜の作品と、サイコ絞殺魔羊たちの沈黙、そうして本作コレクターのように、明かに心を病んでいて普通でないような人が起こした犯罪を描く作品とに、二分されるような気がします。本作は後者の系譜のうちの傑作の一つと云えるのではないでしょうか。
Terence Stampが犯罪者なのに、いつもスーツをピシッと着込んでいて、ネクタイもオシャレだし靴下も原色一色で、非常に美しく映えている。シャツも真っ白で、まったく犯罪者っぽくなくて、そういうところが逆に狂気を感じさせて怖かったです。
小生は自分は死ぬほどスーツが似合わない人物なのにも関わらず、スーツが好きで、映画でもイケメンがカッコよくスーツを着るシーンがとても好きで、本作でもTerence Stampの出演場面ごとにネクタイが変わるのが、とても愉しみでした。
クライマックスはウィリアム・ワイラー一流のペーソス溢れる名場面で、『ローマの休日』とはまた違った意味で、「型に嵌った人間」の寂しい人生の悲哀を描いた名作だったと思います。
そうしてワイラー監督が描いた人間の悲しさは、女の子を監禁するほどではないにせよ、何らかの「型に嵌って」行き詰まった人生を、多かれ少なかれ強いられている我々観客たち一人ひとりにとっても、何かしら心に響き合うものがあるのではないかと思っています。

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