Lolita directed by Stanley Kubrick

1962

今回はスタンリー・キューブリック監督の1962年の作品Lolitaを再見しました。たぶん、前に観たのは15年くらい前だと思います。
小生はキューブリック監督作品は、ほとんどすべて拝見しておりますが、本作は、そのなかであまり印象に残っていない作品だったので、今回、再見してみました。
本作は、オトナ向けのブラックコメディといった味わいの作品で、若いころに観たときと違い、今回は非常に面白く、心地よく、キューブリックの皮肉っぽいタッチを堪能しました。
Peter Sellersのアクの強い毒々しい演技が素晴らしかったです。対してJames Masonは、彼(Peter Sellers)の自由さに辟易しながら、どこかで自分だって自由に生きたいのになと願っているけれど、果たせずに煩悶する、そんな神経質な演技を見せています。この二人を鮮やかに対比させる、キューブリックの嫌らしいコメディ・タッチの、軽やかさと趣味の悪さが楽しかったです。
James Masonの張り付いたような微笑みの表裏に、嫌になるほどに現れている、老いの自覚とか、諦める気持ちみたいなものは、若い頃はさっぱりわからなかったので、それに共感できるようになった年齢に小生もなってから今回、こうして見返して、本作の底のない魅力に気付くことができて、よかったです。
若く美しいロリータを演じたのはSue Lyonで、大きな縁取りの帽子、すらりと伸びた美しい足の指先、カメラマンはOswald Morissですが、キューブリックの職人肌の欲求によく応えて、モノクロームの美しい鮮やかな色調の中に、彼女の魅力をよく描き込みました。
こうして見返してみると、こんなに完成度が高い作品だったのかと、驚きました。久しぶりにキューブリック監督の上質で丁寧な仕事ぶりに接し、とても好い時間を堪能しました。
ピーター・セラーズは、かなり変な喋り方をしていて、たとえば会話の途中で何度も何度も、・・・あの若くて美しい女性は・・・と、舌を噛みそうな早口で繰り返すのですが、そういうシーンの底意地の悪さが、やはり本作の最大の魅力のひとつだと思います。James Masonがあまりにも可哀想で、惨めで、ひどくて、何度も笑ってしまいました。普段、小生自信も、可哀想で、惨めで、ひどい人生を送っているので、あまり笑えないが、好きな映画を観ているときだけは、どういうわけか、心から笑っています。

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