すべてが狂ってる

1960

冒頭からカメラの高さだけをfixして、奥手前、左右に目まぐるしく移動するカメラワークの素晴らしい躍動感や、雑踏の中で望遠カメラで声だけ拾うような臨場感など、街に根差した視点が魅力的な鈴木清順監督の1960年の作品「すべてが狂ってる」を拝見しました。
いつの時代も「今の若者はけしからん」という言説は存在して、最近もゆとりとか、Z世代とか色んな言葉があるけれど、当時も、アプレ・ゲールという言葉などがあったようで、戦争を若い頃に体験していない世代が、上の戦争を体験した世代から見て奔放で自由で、刹那的、快楽的主義な傾向がある若者たち、という見方をされているのがよくわかる作品です。
ジャズがfeatureされた作品で、コールマン・ホーキンスのポスターが何度も大写しにされていました。音楽の普遍的な役割として、自由や憧れの象徴として、当時から、若者たちの心に音楽が根差しているということがよくわかる描写です。
出演は川地民夫さん、残念ながら本作以後の目立った活躍がありませんが当時、清順監督のお気に入りだったという禰津良子さん、本作の前年にデビューされていて、本作でも未だ新人とクレジットされている吉永小百合さんなどです。
のちに中期〜後期の清順作品に湧き上がってくるような高い芸術性、極度に個性的で個人的な語り口、清順美学とも云われるような伝統と新奇を併せ持った素晴らしいダイナミズムの萌芽を、じっくりと堪能できる良作でした。

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