アル中病棟 失踪日記2 吾妻ひでおさん

2013

吾妻ひでおさんご自身を含むアル中患者たちが、駅から降りてミーティングへ向かう途中、エスカレーターをのぼろうとしている無邪気な女子高生の集団とすれ違う、それだけの一枚の絵がまるで最高の映画のショットのように、しみじみと心に滲みました。
一度や二度の読了ではとても魅力を汲み尽くすことができない途方もない作品で、吾妻ひでおさんのように深い慈愛を持った漫画家は、残念ながら二度と表れないのではないかなと思っています。
吾妻ひでおさんのように醒めた視線は、なかなか普通に生きているだけでは得られないものだと思います。
一見、ぼんやりとした可愛げのある絵に観えるけれども、読めば読むほど、深い内省と強いstruggleを同時に併せ持った力強い文体を持った、唯一無二の一流の芸術家の作品だと思います。
この漫画をじっくりと読んでいると、吾妻ひでおさんほど小生の心を深く理解してくれる人は、どう考えても、他にいないということがわかってきます。
本書を読んでいると、小生は、もう余生は、寝て、酒を飲んで、あとはこの漫画だけを読んで生きてゆきたいなと、あまりにも好きすぎて、少し厭世的な気分になってしまうほど、小生にとっては少し危険な漫画ですが、常に座右に措いておきたい一冊です。

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