寒灯・腐泥の果実 西村賢太さん

2013

2013年に出版された西村賢太さんの短編集を読了。今では絶版になっていて、Amazonで中古価格が高騰していてます。私は都内の図書館で借りて読みました。
西村賢太さんは、日本語の使い方が美しく、あまり見ない古風な表現などを自家薬籠として使いこなしており、氏の文学の引き出しの豊穣さに改めて恐れ入ります。タイトルだけを読んでも、並の日本語の感性では出てこない単語になっていると思います。そういう西村さんの本以外では、まったく見かけないような、いやに古風な語彙が、本文中にもたくさん出てきますが、そうしたところに押し付けがましい、衒学者めいた嫌らしさを一切感じさせないのは、ひとえに氏の人徳によるところだと思います。
自意識に意味の重々しさのようなものがなく、氏が孤独な生き方を通して培ってきた、この世界との繋がりを持った確固たる文体は、唯一無二の世界だったと思います。
他の誰よりも深い美意識をお持ちでも、大きな主語では語らないで、斜に構えがちな西村さんは、何かと誤解されがちな存在だったと思うけれど、氏が有していた孤独な心の名残は、私の心に深く刻まれています。
西村氏の早逝に、改めて哀悼の意を表します。

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