こんにちは。せんじつ、拝見した“…All the Marbles”は、のちに”California Dolls”に改名された1981年の、Robert Aldrich監督の最後の作品です。当時あまり光があたっていなかった女子レスリングについて、「だれも撮っていないから撮りたかった」と語ったという、アルドリッチ監督の優しさと、弱い人々へのsympathyに充ちた、美しい作品になっています。ドサ周りの女子プロレスラー二人組のマネージャーを演じた名優Peter Falkの人情味あふれる演技が、すばらしいのひとことです。うまくいかない人々の ― 小生の人生も、いつもそんな按配だから、殊更によく分るのだが ― 地を這い回るような生き方の悲哀を、愛情とペーソスたっぷりに語り尽くす、ロバート・アルドリッチ監督の燻し銀の演出は、隅々まで心地よく、荷風ふうの云い方をすれば”命が伸びるような”、すばらしい作品に仕上がっています。鄙びた薄汚れが目立つアメリカのオンボロ車で、自由と独立の欠片の光跡を随所に仄めかしている筈のアメリカの田舎町を走り回るとき、必ずイタリア人のひどく古風なオペラを流す奇妙な偏屈さを見せるPeter Falkが、タオル代を不当に請求する興行主相手に一歩も引かず、興行主が極悪マージンで儲けて、たんまり溜め込んだマネーで購ったベンツを、野球バットでぶち壊すシーンは、それを必死に止めようとするカリフォルニア・ドールズの悲鳴とともに、非常に痛快で心に残りました。美しいドールズの旅程を、煩悶や、やるせなさといった負の感情を含めて、華やかに演じたのは、Vicki FrederickとLaurence Landonの2人です。literally,泥まみれの見世物になって、生きることの虚しさを熱く滾らせるシーンも含め、passionateな二人の姿が、鮮やかな印象に残りました。
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