今回は私が大好きなジョニー・トー監督の2016年の作品、”Three“を鑑賞しました。
原題は、「三人行」という、哲学的な匂いのする素敵なタイトルなのに、エドワード・ヤン監督の”Yi yi“という文字数が少ないことで、かえって想像力を掻き立てるタイトルの映画が、日本だと何故か「ヤンヤン 夏の思い出」という、ひとこと余計な邦題になってしまったように、本作も日本では「ホワイト・バレット」と、ちょっと残念な邦題になっています。
エルンスト・ルビッチ監督の映画”The shop around the corner“の邦題も何故か「桃色の店」にしてしまいました。観たい映画を選ぶときに、邦題を気にする人は少ないとは思うけれど、こういう「ちょっと残念な邦題」が、どうやって出来上がるのか、ちょっと興味があります。
さて、本作はジョニー・トー監督らしく、切羽詰まったアウトローの人たちが繰り広げるドラマになっています。
三人行という原題は、とても深い哲学的なイメージの広がるタイトルですが、本作においては病院にいる命を救いたい医者や看護師たちと、どうにかして犯罪者を逮捕したい警官たちと、大怪我を負いながらどうにかして逃げ出したい犯罪者たちの三人の交錯する運命を意味しています。
病院という場所は、警官さえ迂闊には自由に正義を発揮できない特殊な環境になっており、ある種、現代のアジールのような側面があります。そういう特殊な環境下での緊迫感あふれるやりとりがとても魅力的な作品になっています。
弾丸とびかうクライマックスの、マトリックスもびっくりな特殊効果も見ものです。
本作は、ジョニー・トーの絢爛なキャリアのなかでは比較的、目立たない作品になっているのではないかと思いますが、それでもフィルム・ノワールの巨匠の毒々しくも風味新かな仕事ぶりを、充分に堪能できる佳作に仕上がっています。皆さんも機会があれば是非ご覧になって見てください。
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