狂覗　藤井秀剛監督

2017年の日本映画『狂覗』を拝見しました。パッケージから想像して、可愛い、淫靡な女子生徒がたくさんでてくる映画かと思って借りましたが、ほとんど教師のみのやりとりの密室劇で、思っていたのと違いましたが、なかなか奇矯な味わいのある作品で、面白かったです。他の方のレビューにも書かれていましたが『12人の怒れる男』という1957年の映画がありますが、あの映画を観たのも、私はもう20年くらい前なので、ほとんど内容を覚えていないのですが、男たちが、狭い部屋でずっと喋っている、という印象だけは残っていて、この映画でも、閉ざされた空間での会話がとても多くて、人と人との会話によって秘密が暴かれ、物語が展開する、というところに、『12人の怒れる男』を彷彿とさせるところがありました。密室の中に様々な性格の登場人物が入り乱れ、否応なしに関係性を発展させざるを得ないという展開は、一見、開かれた空間にも観えるが、じつは様々な柵によって、極めて閉鎖的な関係性が、往々にして顕在せざるを得ない現代社会の、メタファーとして機能しています。明るさを抑えて、ざらついたような色使いは『π』のような前衛的な映画を彷彿とさせます。しかしながら本作『狂覗』が前衛的かというと、そういう気配はそれほど強くありません。特殊な肌触りの作品ではありますが、物語には、感覚的で意味が分かりにくいところが少なく、あくまでも論理的な筋書きを追ってゆけるような落ち着いた構成で、その辺りの匙加減が面白い作品です。