『関東無宿』鈴木清順

1963


鈴木清順監督の1963年の作品『関東無宿』を観ました。主演の小林旭さんが、影のある、昔気質のヤクザを演じて名演。品川区の京浜急行線、北馬場駅(現在の新馬場駅)にて撮影されたということですが、東京の情緒ある街並の感じが非常に好もしかったです。
その個性的で斬新で唯一無二の演出を清順美学と呼ばれ、世界中にファンの多い鈴木清順監督ですが、本作でも斬り合いのシーンや、男女が恋仲になる場面などで不意に照明を落としたり、血を連想させる真っ赤な照明で画面を充たしたりといった、自然な演出ということを無視した斬新な色使いが素晴らしいです。また、女学生が他人のロマンスについて語り合いながら並木道を歩くシーンなど、女の子へのクローズアップのリズムが独特で、なにか青春の感情の不穏なうつろいやすさを示しているように思いました。
本作で描かれる日本、東京の姿は、すでに2023年の世の中からは喪われていると思います。しかし、この映画で描かれる人々が、厳しい渡世のなかで、なお護ろうと切望し、大切にしてきたもの。つまり、本作で描かれる人々の心のありかたのようなものは、現在も決して喪われているものではないでしょう。
余談ですが、私は、映画は若い頃から好きですが、ロケ地巡りなどの趣味は、今までありませんでした。併し、あまりにも風景が魅力的だった本作を拝見した結果、品川区の新馬場駅に行ってみたい・・・という気持ちに今、囚われています。(品川区は人生で10000回くらい通り過ぎているが、新馬場駅には1回も行ったことがありません)いま行っても、この映画に出てくるような風景は、もうないだろうけれど、その残り香だけでも調べに行ってみたい・・・などと妄想するが、結局ほとんどの確率で行かないと思われる出不精の私です。

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