2015年の映画The Big Shortを拝見しました。サブプライム・ローン問題が顕在化する以前の米国で、ムーディーズなどの格つけ機関が不動産の金融商品に、ひどく大雑把な審査でAAAと言った「非常に良い」評価を与えており、誰もが不動産の金融商品は暴落しないと確信していた時代に、その経済の歪みにいちはやく気付き、誰もショートを仕掛けなかった金融商品に対して巨額のショートを仕掛けた人々のドラマです。ウォール・ストリートという一見、映画とは対極にありそうなところを舞台に、このような面白いドラマを仕上げたところに敬意を表します。
経済の知識が皆無の小生にはよく判らない金融用語などが頻出しますが、フェイク・ドキュメンタリーふうの状況説明で、しっかりと説明してくれるので、問題なく理解できて、面白かったです。
演者の中では、やはりブラッド・ピットが印象的でした。殺伐とした金融業を引退して、一人で野菜を育ててのんびり生きていたが、若者の熱意に絆されて再び戦地に舞い戻る中年の紳士を好演しています。ブラッド・ピットは、こういう落ち着いた、狂気を目に見える形で表出させることなく、熱い心情を内側に秘めるような、冷たい演技が本当に似合う名優だと思います。
本作を拝見すると、何かの状況を見極める時に、その実際の様子が、聞いた話、人々が当たり前だと思っている話とは全く違うということが、よくわかります。
小生自身も、少額ながら投資をしているので、自分の目で感じたものに拠って買う会社、買わない会社を選んでゆきたいものだけど、実際には・・・
目に見るもの、耳に聞くもの、一つとして新ならぬはなく、筆に任せて書き記しつる紀行文日ごとに幾千言をかなしけむ、当時の新聞に載せられて、世の人にもてはやされしかど、今日になりておもへば、穉き思想、身の程知らぬ放言、さらぬも尋常の動植金石、さては風俗などをさへ珍しげにしるしゝを、心ある人はいかにか見けむ。
森鴎外『舞姫』
という若い頃に読んだ鴎外の小説の主人公の浮かれぶりと、殆ど状況は同じような感じになっていて、ただ、違うのは新聞に載らなかったし、もてはやされもしなかった。
しかし、どうでも良いけど、この映画、原題はtightで好もしいのに、邦題は、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』これは、ひどいネタバレになっていますね(笑)ちょっとは工夫しろよ(笑)
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