22 July

2018

Netflix製作の2018年の映画22 Julyを拝見しました。Based on true storyということで、どこまでが実話でどこからが創作かわかりませんが、非常に印象に残っているノルウェーの連射事件をモチーフにした、なかなか重厚な作品でした。
さまざまな立場の人に公平に視線を振り分けたまっすぐなスタンスに重みがなく、監督の意見とか人格が非常に機械的に処理されていて、誰かの孤独感を描こうとか、誰かの絶望感を描こうということが、あまりありません。
そのことで良くも悪くも非常に淡々とした作品に仕上がっていますが、スピルバーグ監督のミュンヘンや、イーストウッド監督のアメリカン・スナイパーのような、監督の個性や偏りや信念を強く画面に感応させた、ドラマティックな云い足りなさを残す、良くも悪くも個人的な作品、古い意味での映画としては、多分に正統的な作品のほうが、同じ実話を基にした作品であっても、より強く印象に残ることは確かです。
Netflixの作品なので、political correctnessは非常に強く意識されており、そのような制約のなかで、監督の個性を殺さざるを得なかった点はあるのかもしれません。それにしてもノルウェーの極寒の広大な土地柄、自然の厳しさと立ち向かう強い人々の豊饒な生き方を容易に想起させる歴史を持つ土地柄を観ていると、あのような惨劇を呼び覚ます土壌があるようにはとても思えません。
全体的に淡々としたタッチでしたが、被害者の寡黙な父親が、言葉少なく氷上で「お前の代わりだったらよかったと思っているよ」と云うシーンは、とても印象的でした。多分それは、事件の被害者のご両親のお気持ちとして、決して誇張ではないセリフだったと思います。
毎年、様々な事件が起こるなかで、忘れても構わない事件など何一つとしてありませんが、こうした作品が残ることで、事件を知らない若い世代の方々も、この事件を知るきっかけになることは、とても良いことだと思います。
そういう意味では、今回、私も、事件を思い出す意味で、この作品を観てよかったと思っていますし、また、日本でも、スポンサーの意向が強く働くことで、なかなか予算が付きにくいかもしれませんが、こうした作品がもっと作られたら良いなと思っています。

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