IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

2017

2007年のStephen King原作のホラー映画”It”を拝見しました。監督はAndy Muschiettiです。けっこう自由に最新のテクノロジーと、古めかしい雰囲気の暗闇や、薄汚い街並みの風景を小気味よく配置していて、リラックスして楽しむことのできる、無難な娯楽作に仕上がっていました。ITの見世物的な恐怖の、衒いのない、裏表のない演出は、いまどき珍しいまでの清々しさです。よくできた遊園地のお化け屋敷を観ているような、気分になりました。

子どもたちの友情や、アメリカの田舎町の風景はStranger Thingsとか,Stand by Me (film)を思わせる雰囲気で、なかなか魅力的でした。

キャストのなかで印象に残ったのはヒロインのSophia Lillisで、少し孤独感のある女の子を好演していました。

物語はITという子供たちを脅かすピエロのような存在を軸に語られるのですが、現実とも非現実とも取れないITという存在は、暴力や恐怖や大人たちの穢いエゴイズムのメタファーになっています。そうしてその悪しきものは、下水道を通じて繋がっている。暗闇をとおして、心の暗闇が共鳴するという、扉を開けない感覚というか、開かれた空気の閉塞感のようなものは、どこか高校生の頃に愛読していた村上春樹さんのHard-Boiled Wonderland and the End of the Worldの雰囲気に似ていて、あの小説を再読している気分になりました。

スティーブン・キングの小説は何冊か購ったが、一冊も読んだことが無いのですが、若い頃に、数え切れないほど何度も何度も読み返した村上春樹さんが、スティーブン・キングの影響は、かなり強く受けていると思うので、間接的にスティーブン・キングを読んでいたようなものだったと思います(笑)

ちなみに、この映画は、なかなか面白かったけれど、先に挙げた「ちょっと雰囲気が似ている」3作品のなかで、小生がいちばん好きなのは、圧倒的にStrager Thingsです(笑)

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