“The Equalizer”に描かれるアメリカのダイナーが羨ましい

2014

Antoine Fuqua監督の映画”The Equalizer”を拝見しました。一人、終夜営業のダイナーで本を読む姿勢が、いやに絵になっている静かな男は、かつてDIAに属していたエージェントで、今は過去の喪失のなかで静かに暮らしています。彼は喪失のなかでほんとうの強さを獲得しており、自分自身のなかにはすでに終わらないほどの平穏がありますが、周囲の弱い人々の人生に起こる不穏さにたいしては、まだ力を発揮することができます。人数も武器も不利な状況でも、自分を含めた周囲を観察、分析する冷静さ、短い時間ですべてを決することのできる凝縮された鋭敏さがあれば、どんなに強い敵にも立ち向かうことができる。彼の強さはレイモンド・チャンドラーがかつて、小説に描いたフィリップ・マーロウのように、弱い隣人を助けるための強さであり、彼自身の為のものではありません。そのような営みの中でequalize(平静さを取り戻してゆく)するものは、彼の隣人のみならず、心に傷を負った彼自身なのかもしれません。デンゼル・ワシントンの渋い演技が素晴らしかったです。悪党の眼に最期にうつる、デンゼル・ワシントンの瞳の冷たさを克明に描いた独特のカメラワークはMauro Fioreの手によるものです。この映画を観ていて、私がアメリカって羨ましいなと思ったのは、こういう、いい感じのダイナーがあるところです。日本には、終夜営業の店ってそんなにないし、ファミレスくらいはあるけれど、ああいう店って、変なパフェの卓上広告とか垂れ幕とか、アメリカのダイナーみたいに落ち着いた雰囲気は皆無なので、とてもじゃないけれど、本なんて読めないですよね。。。まあ、あるところにはあるのかもしれないが、私の家の周りにはない。。。

Related works

コメント

Copied title and URL