烏が待っている昏い部屋

ぽえむ

絶え間ない物陰にじっと俯いている私の影は
ひらりと翻るマントに怯えて動かなくなった
烏の鳴き声と共に次第々々に恐怖心は薄れ
やがて私も夕暮の中に羽を休めることを憶えた
お前はどうして此処にいるのかと、するどい子供に訊かれたら
涙の流し方を忘れたからさなどと、尤もらしく応えるだろう
そうして心の中に降りしきる雨の音を
忘れるために、白けた様子で歌を謳うのだ
私の歌は響く、路傍の自販機のチラチラと瞬く蛍光灯の影に
私の歌は響く、青々と広がる春の空に微笑む美少女から遠く離れて
私の歌は響く、油臭い埃を被った列車の轟く鉄橋の錆びれた臭いと共に
しかし埃を被ったギターは私の心をも掠めもせず鈍い音を発するだけなのだ
もう疲れただろうと誰かが云う
頷く気力もなくて
昏い部屋の、昏い、ちっちゃい丸窓に
吐き出した煙草のけむの白い色

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