Romeo and Juliet(1968 film)

1968

Franco Zeffirelli監督の1968年の作品、Romeo and Julietを拝見しました。ニーノ・ロータの、もの悲しいなかに、すこしの懐かしさを湛えた音楽がすばらしかったです。
2023年に本作のヌード・シーンの件で訴訟となり、敗訴となり、お二人への(すでに亡くなっている)監督からのハラスメントがあったのかどうか気になるところではありますが、オリヴィア・ハッセーレナード・ホワイティングの若き二人の主演も、初々しく忘れられないものになっていると思います。
私は若い頃、都内の私立大学に籍を置いていた時分、『ロミオとジュリエット』の演劇を英語でする授業を受講していました。当時、英語が難しくて、劇の内容は全然わからなかったけれど、雰囲気だけは感じていました。本作を拝見して、その頃の鬱屈した日々を思い出し苦しいような、寂しいような気持になりました。
この映画は、同じく、文学を原作としているソクーロフ監督の2011年の名作『”Faust“』のように、映画や文学の垣根を超越した、革新的で洗練された表現ではありません。おそらく、原作のセリフを、最大限に生かそうとした結果とは思いますが、やや堅苦しいショットや、映画らしくなく、原作の朗読を見ているような気分になってしまうシーンも多かったと思います。しかし、だからこそ、原作の小説が持つ、私のような鈍感な人間では、その一部しか汲み取れない、豊富なニュアンスのあるセリフのイメージが随所に顕われていて、英語がわからなくても、なんとなくテキストを読んでいた学生時代の気持ちを思い出して、つらいような、苦しいような気分になりました。
若い頃に読んだ小説や、その頃に触れた小説のセリフが想起する世界は、その小説自身の力によって想起された世界と、当時の自分自身が住んでいた息苦しい世界への苦痛や懐かしさの感情が混沌しており、幾重もの影となって心に浮かんできます。もう二度と訪れない日々のことを思い出すことは、つらいことでもあるけれど、もう少しその世界に触れていたくなって、私は今更ながら、キンドルにシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をダウンロードしてみました。thyとかthouとか、古い英語の作品なので、読みにくいけれど、いつか読めたら良いなと思います。

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